家の屋根というと三角屋根が一般的ですが、実は様々な形状の屋根があります。また屋根塗装や修繕・リフォームにおいては、屋根の形状によって、構造や面積が異なるため、同じ建坪の家でも屋根塗装やリフォームの金額が変わることは珍しくありません。
ここでは、屋根の形状別に、特徴やデザイン、建物に与える印象などをそれぞれご紹介いたします。
切妻(きりつま)屋根
切妻屋根は、2枚の板を左右対称に合わせた三角屋根のことです。一般的によくみられる屋根の形状で、現在でもよく取り入れられる形状です。建物全体のイメージとしては、温かみのある印象になります。
屋根で覆われてない三角に見える側面を「妻側」、直線に見える面を「平側」と呼びます。この妻側は平側と比べ紫外線や雨が当たりやすく、劣化しやすい傾向にあります。また妻側の屋根の断面を覆う破風板も、雨だれや紫外線、風などの影響により劣化しすい箇所ですので、塗装の際は補修などを施します。
切妻屋根は、勾配によって面積が変わります。建坪が同じだった場合、勾配がきついほど屋根の面積は広くなります。一般的な勾配(3寸~5寸)の場合は、屋根投影面積※に対して1.044~1.118倍になります。
※屋根投影面積とは、屋根を真上から見たときの形で求められる面積。建物1階の床面積にあたる「建坪」に、屋根の庇の面積を加えたものにあたります。傾きを含まずに、平面の面積を算出します。
片流れ屋根
片流れ屋根は、文字通り片方にだけ流れる一枚屋根のことです。直線的な形状になるため、スタイリッシュな印象の建物に多いデザインです。
屋根の頂上にある平らになっている部分は棟と呼ばれています。片流れ屋根の場合、この棟にあたる部分に伝い水と呼ばれる現象が起こりやすく、雨漏れの原因になることもあります。
切妻屋根と同じく、勾配がきつくなると面積も広くなります。またデザイン性を重視した切妻屋根の建物は、勾配は比較的高くなる傾向にあります。片流れ屋根の一般的な勾配(3寸~6寸)の場合は、屋根投影面積に対して1.044~1.166倍になります。
陸(ろく)屋根
陸屋根は、地面と水平の平たい屋根のことを指します。屋上がある家や、鉄筋コンクリート造のビルのような建物でみられる形状の屋根です。
片流れ屋根と同様、直線的な形状になるため、スタイリッシュな印象の建物に多い屋根です。
他の屋根と比べると勾配が小さいので、雨水を逃がす力が弱くなります。そのため屋根部分への防水加工や高い防水性能を持つ塗料が必要となり、塗装単価は他の屋根と比べて高くなる傾向にあります。庇が無ければ、建坪そのままが屋根の面積となります。
寄棟(よりむね)屋根
寄棟屋根は、屋根の中心に棟があり、四方に流れる屋根の形状の屋根のことです。瓦屋根などでもみられる形状で、街に馴染みやすく落ち着きのある印象の外観になります。
切妻屋根で見られた破風板は、寄棟屋根には無いため、外側からの劣化には比較的強い形状です。一方、寄棟屋根は屋根裏に湿気をため込みやすい構造のため、内側の腐食や劣化には注意が必要です。
四方の勾配が同じ場合は、切妻屋根などと同じ方法で屋根面積が算出できます。一般的な勾配(3寸~5寸)の場合は、屋根投影面積に対して1.044~1.118倍になります。
方形(ほうぎょう)屋根
方形屋根は、屋根の1か所が頂点になっている、四角錘に形状の屋根です。正方形に近い形の建物で採用されますが、日本では敷地の兼ね合いから正方形の家が少ないため、方形系屋根の建物も少ない傾向にあります。
下から見上げると屋根の形が三角に見え、切妻屋根と同様、温かみを感じられる建物に多い形状です。棟が無いため、雨漏れのリスクは低いのですが、屋根の内側の湿気を逃がす場所が無いため、屋根の内側の劣化に注意を払う必要があります。
屋根の面積は、4方が全て同じ勾配であれば、同じ勾配の片流れや切妻屋根と同じ方法で算出できます。屋根投影面積に対して1.044~1.118倍になります。
差しかけ屋根
差しかけ屋根とは、1階が2階部分と比べて広い家にみられる屋根の形状です。また屋根のデザインとして差しかけ屋根が取り入れられるケースも増えてきています。
2階と1階で差しかけ屋根となっている場合は、1階部分の屋根が見えるので、屋根の劣化状況が把握しやすくなっています。軒がある面(平面)は、雨水が比較的あたりにくいというメリットもあります。
屋根の形の印象は、他の屋根と比べると少しカジュアルで明るい雰囲気の建物にマッチしています。
屋根の面積としては、他の屋根と比べ複雑で、面積も広くなるため、塗装金額は高めになります。また破風板などの劣化にも注意が必要です。
入母屋(いりもや)屋根
入母屋屋根は屋根の上部に矢切りと呼ばれる壁があるデザインの屋根です。瓦屋根でもみられるデザインで、複雑で重厚な形から、屋根全体に重みがあり、高級感を感じさせてくれます。
寄棟屋根と異なり、矢切部分から湿気を逃がすことができるので、躯体や屋根裏の腐食のリスクは比較的小さくなっています。複雑な形状の屋根も多く、面積の算出には現場調査による測量が欠かせません。
腰折(こしおれ)屋根
腰折屋根とは、切妻屋根が途中で折れている形状の屋根のことです。別名をギャンブレル屋根と呼びます。
丸みを帯びているため、可愛らしく優しい印象になります。また片流れ屋根でも、腰折状のタイプのものがあります。
なお、腰折屋根(ギャンブレル屋根)と混合されるものに、マンサード屋根というものがあります。マンサード屋根は寄棟屋根が2段に折れているような形状の屋根で、古い洋館などで見られます。
他の屋根と比べると、屋根が膨らんでいるような形状のため、面積は大きくなる傾向にあります。
招き造り
招き造りとは、切妻屋根と片流れ屋根の間のような形状の屋根です。片方の屋根がもう片方と比べて小さく、アシンメトリーな構造でデザイン性の高い住居にも用いられます。
片流れ屋根のように片方からの採光性、通気性を確保しながら、片流れ屋根のデメリットである伝い水も抑えられるため、バランスのとれた機能面も魅力の一つです。しかし妻側や破風板などの劣化については、切妻屋根同様、補修が必要となることも多く、劣化状況には注意が必要です。
屋根の面積は片流れなどと同じよう建坪に対しては比較小さくなる傾向にありますが、特徴的な屋根を魅せるために、そもそも建物自体が大きく、屋根も広い機構の建物が多いようです。
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